--スカウトはあまり重要な仕事ではない?
A氏:いえいえ、プロ担当スカウトは重要です。ほら、メジャーの投手1人とマイナー投手3人との交換トレードとかあるでしょう? ああいうときに、他のマイナー球団の選手をチェックしているプロ担当スカウトの存在が重要になってくるんです。そういうトレードで入団したマイナー選手のひとりが数年後にエースになるなんて話は珍しくないですから。アマ担当スカウトで優秀な人はこういうプロ担当スカウトに引き上げられたりします。
--スカウトが選手を見る基準は日本とアメリカで違うところはありますか。
A氏:アメリカの方が個性的な選手をスカウトすると思われがちですが、私の実感では日本の方が個性的な選手をスカウトしています。
--それは意外ですね。
A氏:というのは先ほどのアマ担当スカウトの話につながるのですが、メジャーでは国土が広いのもあって、同じ選手を何度も追いかけたりしません。また若い人がやっているので、球速、身長、体重という客観的なデータだけ集めてふるいに掛けることが多いのです。日本だとひとりの選手を何年も追いかけたり、スカウトの目利き、主観で判断することも許される。
--そうですね、スカウトが惚れたとか、伝説のスカウトとか、職人的な話がいまだにありますね。
A氏:日本はスカウトの属人性、スカウトの主観的な評価でドラフトされることがありますが、アメリカでは聞かないですね--。
アメリカより日本の方が個性的な選手がスカウトされるというのは非常に興味深い点である。たしかにドラフトでも下位指名に「隠し球」「無名」という選手が毎年いる。またそういう選手がのちにスターにもなったりする。Aさんの話を聞いていて、上位指名のスター選手より下位指名、育成指名の選手が日本野球のキモでもあるように思えてきた。ドラフト会議に注目しよう。