1964年に911が誕生して以来、30年以上にわたって継承されてきた空冷式が消えたのは、現代の排ガス規制をクリアできなかったからだ。水冷化によって快適性も向上。4年前に登場した現行型の911(991型)は、ベンツの代わりが務まるほどラクチンだ。かつてはハンドルのキックバック(路面からの衝撃)で突き指するほどスパルタンな男のマシンだったが、今や最強のデートカー。
我々が目指す“美女としっぽり温泉ドライブ”にも最適となった。
だが、それじゃあ物足りないというドイツの愛好者の間で、「空冷911の方がイカしてるぜ」というブームが起こったわけだ。もはや速いとか快適だとかいうクルマはいくらでもあるが、空冷911の味わいは唯一無二だからである。
では、我々はどうすべきか? 正直なところ、今から空冷911を買うのは、バブル期に家を建てるようなものでオススメできない。「やっぱりポルシェは空冷よネ」とのたまう美女もまずいない。美女はポルシェならなんでもいいのだ。
となると、最適な解は、先代911(2004~2011年製の997型)の中古車だろうか。先々代型(996型)は、ヘッドライトが涙目でポルシェらしくないが、997型なら伝統の丸目。美女もウットリの快適性も備えている。
価格は9年落ち走行4万kmくらいの標準的な中古車で600万円台。さすがにお安くない。空冷911の異常な人気に引っ張られ、ここ数か月で水冷911も100万円以上値上がりしてしまった。それでも25年落ちの空冷911と同じくらいだから、「安い!」とも言える。
※週刊ポスト2015年11月13日号