辞書芸人のサンキュータツオ
また、著書に『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』(角川学芸出版)があり、所有する辞書が200冊にものぼるお笑い芸人のサンキュータツオさんは語る。
「かつては、辞書が競い合っていたのは『収録語数の多さ』でした。しかし収録語数が多いから単純にいいという時代は終わり、各社によってほとんど変わらないとされる辞書の総ページの範疇で、ウチは新語に力を入れる、ウチは言葉のニュアンスの説明に力を入れる…などとそれぞれの個性を際立たせてきました。そのうえで、営業力のある出版社の辞書が売り上げを伸ばしてきたこともあり、編集者も辞書を作るだけでなく売ることを考え始めたというのが今の状況だと考えています」
タツオさんがとくにコレクションに力を入れているという国語辞典においては、近頃プロモーションもユニークだという。
「2010年に『明鏡国語辞典』(大修館書店)がタレントのベッキーさん、2014年に『三省堂国語辞典第七版』(三省堂)が阿川佐和子さんをプロモーションに登場させたのは驚きでした。ただ、もっとも衝撃的だったのは厳格なイメージのあった『岩波国語辞典新版』(岩波書店)が、紙ケースに華やかなピンクの帯とキラキラ反射するストライプ柄を入れて発行したことです。
装丁のデザインや帯の文章、つまり辞書の見た目には編集者の思いがいちばん凝縮されています。ファンシーな見た目の辞書が増えているのだとしたら、それは編集者の“誰に届けたいのか”という意識の表れでしょう」(サンキュータツオさん)
無機質で堅いイメージから、ファンシー化が進み個性的に進化し始めた辞書。「人は見た目が9割」というが、これからは辞書も「見た目」で選ぶ時代なのかもしれない。