◆暴落直後の反発局面をロングで狙う目安

 もちろん、ボラティリティが大きくなっている相場は、うまくいけば大きな値幅を取れるまたとないチャンスでもある。いち早くショート(売り)できれば莫大な利益も狙えるので、リスクを取って勝負をかけるのもいいだろう。たとえば、反転した時に備えてストップロスを入れたうえで、あとは1円ぐらいの下落を狙ってショートするという戦略が考えられる。

 とはいえ、実際はいうほど簡単ではないことを、多くのトレーダーが実感しているはずだ。その渦中で、今がショック時だと冷静に認識することは難しく、あれよあれよという間に下げは加速する。これが暴落局面だと気付いたときにはすでに大底、ということも往々にしてあり、百戦錬磨のトレーダーであってもこうした局面でうまく立ち回るのは容易ではない。

 下落幅が大きいほど反発も大きくなるので、リバウンドを取りに行く戦略はあっていいが、値ごろ感から安易に押し目買いするのも危険が伴う。大底や中途半端な反発を狙う取引はまさに「一発退場」の危険と隣りあわせといっていい。急激なリスクオフの局面でトレードするならまずは目をつぶってショートするしかなく、明確な底打ちのサインが確認できるまではロング(買い)するべきではない。

 羊飼いの場合、米ドル/円であれば底値から1円以上戻して、丸1日下げなければそこで初めてリバウンド狙いのロングを考えることにしている。暴落の直後であれば最低でも1円ぐらいは戻さなければ反発とはいえないと思うからだ。

 ちなみにチャイナ・ショックの時は、羊飼いは勝負を避けた。その数日前から米ドル/円の上値は重いと判断し、ショート目線でスキャルピング(わずかな利幅を狙って短時間で売買を繰り返す手法)を繰り返していたが、この日突然118円台から116円台まで一気にレートが飛んだのを見てトレードを中断した。この尋常ではない値動きが落ち着くまでは、静観することにしたのだ。

 翌日以降、118円台まで戻したのを確認して119円台でロングし、取引を再開したものの、結局わずかな利益で手仕舞って様子見に戻ってしまった。あまりの乱高下に相場観が崩れてしまい、経験上こういうときに無理をしてもロクなことはないと実感しているからだ。

 とはいえ、こうした一時的なショックは、長期的には押し目買いのチャンスといえるかもしれない。長い目で見れば米ドルはいずれ上昇トレンドに復帰する可能性は高いし、レバレッジをかけないのであればショック時の急激な円高でロングポジションを取る戦略も検討の価値はあると思う。

※マネーポスト2016年新春号

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