「この薬は4種のアミノ酸混合物で、作用機序の詳細はよくわかっていません。ミエリンを攻撃するTリンパ球の機能を調整するなどして再発を予防します。1日1回、皮下注射をすれば、現在広く使用されているインターフェロンβと同程度の効果が得られますし、発熱やだるさがないのが特徴です。また内服のフマル酸ジメチルの治験が終了し、2年後には保険承認される見込みです。軽症での治療の選択肢がますます広がると思います」(田中センター長)
進行したMSにはナタリズマブ(商品名/タイサブリ)やフィンゴリモド(商品名/イムセラ)を使用する。ナタリズマブはリンパ球が神経細胞に入るのをブロックする働きをするが、PML(進行性多巣性白質脳症)のリスクがある。フィンゴリモドは、特定のリンパ球をリンパ節に閉じ込める薬だ。飲み始めに徐脈や不整脈を起こすリスクがあり、開始時に1泊以上の入院が必要となる。
MSは早期治療の奏功率が高いため、専門医による患者の状態に合わせた治療がなにより重要だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年2月5日号