国際情報

ユネスコ慰安婦史料登録 客観性ない証言が証拠扱いの懸念も

 2015年、南京大虐殺関連史料がユネスコ世界記憶遺産に登録された。来年(2017年)の「慰安婦関連史料」登録阻止のために何をすべきなのか。わが国が直面する課題を考える。

 中国が昨年ユネスコに提出した資料は中韓が主張する「慰安婦=性奴隷」説が誤りであることを明確に示している。慰安婦が法的に保護されていたことも読み取れる。

 また史料の中には、中国・准海省の旧日本軍連絡部が、江蘇省に駐屯中の部隊に25万2000円の「慰安婦調達資金」を送金したことを示す電報も存在した。ただし、電報には資金の最終的な「受取人」として、慰安所の経営者と思しき民間人の名前が明記されている。これは、施設運営が民間業者に委託されていたことを示す証拠に他ならない。

 慰安婦関連史料のユネスコ登録が申請された2015年6月、中国における「慰安婦研究の第一人者」とされる上海師範大学・蘇智良教授が、米・ヴァッサー大学の丘培培教授らと共著で『中国人慰安婦』を出版した。同書は蘇教授らの研究成果を英文で纏めたもので、サブタイトルは「日本帝国の性奴隷からの証言」。日本軍に強制連行され、性奴隷として扱われたと主張する中国人元慰安婦12人の生々しい証言が掲載されている。

 この中で蘇教授は「慰安婦は全体で40万人に上り、半数が中国人慰安婦だった」と主張しているが、明星大学・高橋史朗教授はこれに異を唱える。

「この40万人説は、仮説に基づいた兵士と慰安婦の割合から導き出したもので、合理的根拠はいっさいありません。

 同書には慰安婦の証言として『慰安婦はいったん“摩耗”したり、病気になったり妊娠すると、即座に(日本兵に)殺され、時には銃剣で突き刺された』といった記述もありますが、蘇教授は、日本の左派学者たちの調査研究をベースとし『慰安婦=性奴隷』説を唱えているに過ぎない。

 彼らは、1944年に米・戦時情報局(OWI)が作成した慰安婦関連の記録などにはまったく触れていません。そこには『慰安婦は将校より高収入であり、接客拒否の権利も認められ、外出の自由も保障されていた』ことが詳細に明記されているのです」

 同書は来年の登録申請で中国側の史料の一つになる可能性があると見られるが、懸念されるのは、こうした客観性のない証言が“証拠”として扱われることだ。中韓の虚偽が歴史に刻まれないために、日本は史実に基づき徹底した反証を行う必要がある。

※SAPIO2016年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン