上村くんの父親は判決後、「犯人は一度も私たちを見ることはありませんでした」「犯人の親も同じです。いまだに謝罪しようという意思すら感じられません」とコメント。育った環境がいびつだというなら、親に責任はないのだろうか。
「親の刑事責任は当然問えませんが、加害者と親に対して民事上の損害賠償請求をする被害者遺族もいます。死刑などの重罪にできないなら、加害者やその両親に、一生かけて高額な支払いを続けさせることが、せめてもの“謝罪”の気持ちを伝え、一生、自分の行ったことを忘れさせないための方法と考えられているからです。
しかし、親の監督責任が認められないケースのほうが多いのです。また、支払いが命じられても、連絡が取れなくなって支払われないことも多いのが現実です。少年の更生に誰も責任を持たないのが現状なので、何らかの制度をつくる必要があるのではないでしょうか」(藤井さん)
被害者の犠牲を伴ってでも、少年法が守りたいのは、罪を犯した少年の更生の機会だ。そのため、少年法で実名報道は禁止され、犯人のプライバシーは守られる。でも守られた結果、全員が更生するとは限らない。現に、神戸市で事件を起こした少年は、昨年手記を出版しただけでなく、ホームページを立ち上げ、“自己アピール”を展開。遺族は、2度子供を殺された気持ちになったのではないか。
未成年の加害者たちは、いつまで“元少年”として守られるのだろう。6月には改正公職選挙法が施行され、選挙権の年齢が18才以上に引き下げられる。選挙権はあるが、少年法の適用を受ける。そんな18、19才は大人なのか子供なのか。藤井さんは「“大人”と“子供”の定義を引き直すべき」だと提案する。
「国際的に見ても、少年法の適用が20才未満というのは稀。日本では運転免許は18才、たばこやお酒は20才と大人と子供の線引きが一律になっていません。
選挙権を18才からにするなら、社会的責任を負う年齢を統一し、少年法適用の年齢を下げることは議論されてしかるべきです。現在のように20才未満だからという理由ですべてを“少年A”にしてしまい、少年法を適用して原則として保護の対象にすることに疑問を持ちます」
少年法を遵守する法曹界からも少なからず疑問の声はあがっている。少年法に詳しい弁護士の星野宏明さんは語る。
「成人と同じくらいの刑罰を科しつつ、教育プログラムも同時に手厚く受けさせるなど、その両立はできるのではないかと思います」
※女性セブン2016年3月3日号