募集定員約100人に対し、173人が志願したが、事前にハードルを上げすぎたためか、募集10人に対して7人の出願にとどまった経済学部など、応募者が定員を下回る学部もあった。合格者は77人と、大幅な定員割れになり、東大が受験生を絞り込んだことがうかがえる。
今回の「超難関」AO入試の合格者77人のうち、14人に共通することがあった。法学部7人、経済学部1人、工学部4人、農学部2人――彼ら14人はみんな、大学受験予備校『AO義塾』の生徒だったのだ。その割合は、合格者の約6人に1人となる。
東京・代々木のオフィスビル内にあるAO義塾の教室をのぞくと、広々としたフリースペースに集う高校生たちが、ノートパソコンのキーを叩きながら熱心に語り合っている。部屋の奥には障子で仕切られた和室スペース(休憩室)もあり、机にかじりついて勉強するイメージの強い「受験予備校」にはまるで見えない。
「松下村塾に敬意を込めて、その間取りを参考に和室スペースを設けました」
こう語るのはAO義塾の斎木陽平塾長(24才)だ。AO入試で慶應大学に合格した斎木塾長は、入学直後の2011年にAO義塾を開校した。自身のノウハウを生かし、AO受験に特化した学習塾として実績を重ね、開校から2年で慶大の合格率が全国トップクラスになった。
現在、教室は代々木、横浜、仙台で展開しており、今受講しているのは40人ほど。授業料は入塾料、平均月6回の授業料や直前合宿の費用を合わせ、受講期間半年で約45万円だ。4月になるとまた入塾者が増えて、夏までには全教室で200人ほどになるという。
今回、東大の推薦入試のため、AO義塾を受講したのは27人。初めての推薦入試のため、各自どう準備すべきか戸惑っていた。そんな面々をどう合格に導いたのか。斎木塾長が続ける。
「とにかく合格点を目指す一般入試と違い、AOでは“入学後にどんな人生を送りたいか”を問われるため、志願理由書の書き方と面接のグループディスカッションの訓練を徹底しました。“なぜ、東大に入りたいか”を突きつめて考えて、上手に表現できるようにしたんです」
合格者の1人で法学部に合格した平野雄介さん(仮名、19才)に話を聞いた。
「高校では国連の安全保障理事会というテーマで研究活動をしていました。意思決定の理論の1つを用いて安全保障理事会の適切な議席配分を考えていこう、という分析をしていたので、推薦入試ではその成果をアピールしました。個人面接は10分くらいで、“あなたは何を得ましたか?”“入学後もその活動を続けますか?”といった質問があり、話していたら一瞬でしたね」
※女性セブン2016年3月10日号