「私にはパワーヒッターのイメージが強いかもしれませんが、相手の投手や捕手のデータを毎日分析していました。その準備があったから、パワーを生かす打撃ができたと思っている。当時の経験から、捕手の長所や短所を見抜くのは私の得意とするところ。だから、どうすればバッターを抑えられるかを捕手に伝えることができるはずだし、捕手も成長できる。私が理想とするのは、成長した捕手が投手をコントロールするバッテリーです」
捕手の配球を分析すれば打撃にプラスになると気づかせてくれたのは、ヤクルト時代の同僚、古田敦也氏だった。
「古田さんがマスクをかぶると、調子のよくない投手もいい投球をする。逆に、古田さんが受けていないと困ったような表情になる。しばらくして、古田さんに配球の考え方を教えてもらうようになって、同時に投手たちとも話をするようになると緻密な考えがわかってきた。そうやって自分の打席に生かしていきました」
捕手が投手を完全にリードするのが日本のスタイルであるのに対して、メジャーでは投手が主導権を握る。元メジャーリーガーにとって抵抗はなかったのか。
「そこが日本の野球の大きな特徴であり、素晴らしいところなんです。捕手が中心になれば、野球が緻密になる。それこそが私の目指す野球です」
◆アレックス・ラミレス/1974年生まれ。ベネズエラ出身。メジャーのインディアンス、パイレーツを経て2000年にヤクルトに入団。2003年、打率.333、40本塁打、124打点で打点王と本塁打王、最多安打のタイトルを獲得。巨人を経て、2013年に外国人選手初の2000本安打を達成。2014年、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスに打撃コーチ兼任の外野手として入団。2014年に現役を引退、2016年横浜DeNAベイスターズ監督に就任。
■取材・文/田中周治 撮影/スエイシナオヨシ
※週刊ポスト2016年3月11日号