「柿の種」とピーナッツの配合も時代で変わっている。当初は重量比で「柿の種」が7、ピーナッツが3だった。
「でもお客さんからもっとピーナツが食べたいという要望があり、5:5の比率にしたんです。そしたら売り上げが落ちたんですね(笑)それで今は中をとって6:4の比率になっています」(同前)
さらに今年1月からは製品をリニューアルして、ピーナッツを従来より高温で短時間で揚げる製法で、カリッとした食感とこくをだしている。また50周年記念商品として、タイ発祥の辛口チリソースの「シラチャーソース」味の「柿の種」の発売も始めた。
実はここ数年、ポピュラーなお菓子の「周年記念」が続いている。亀田製菓の商品でも「柿の種」だけでなく、もうひとつの主力商品である「ハッピーターン」も今年発売40周年ということで、4月以降にキャンペーンが用意されている。
また他社でも、カルビー株式会社の「かっぱえびせん」が2014年に発売50周年だったし、「ポテトチップス うすしお味」が去年、発売40周年だった。また日清シスコ株式会社の「ココナッツサブレ」も去年、50周年を迎えていた。
1960年代半ばから1970年代半ばまで、お馴染みのお菓子の多くが発売されているのだ。この年代を見て、ピンと来ないだろうか。高度経済成長期である。右肩上がりの経済を背景に、ほっとひと息ついて生活にゆとりが見え始めたころ、人々は家の中で頬張るお菓子という「愉しみ」を求めたのだろうか。
亀田製菓は現在、世界四か国に子会社・関連会社を6つもつ。そのうちのひとつ、2013年に再上陸を果たしたベトナムでは、歌舞伎揚げに似たお菓子が「もんのすごおおく売れてます」(同社広報部)。ベトナムの人口は9000万人超で国民の平均年齢は29歳、経済成長率は7%近い。まだ規模は小さいが勢いのある経済成長を遂げている国は、やはりお菓子を求めているのだ。
代表的なエレクトロニクス・メーカーが台湾企業の傘下に入ろうとする斜陽の今の日本において、「柿の種」は往時を忍ばせる「遺産」でもある。ピリ辛あとに舌に残るのは切なさか。