「糖尿病」は予備群を含めれば患者の数は2000万人に及び、日本人の国民病ともいえる。ところが、同じ病名なのに60歳を境に、合併症の危険や治療の常識が変わるという。では、60歳未満と以上とでは、治療法にどんな違いがあるだろうか。
糖尿病は食事療法を中心とした生活習慣の改善が基本であり、その後に薬物療法を開始する点はどの世代も変わらない。しかし、その実践内容は60歳を境に変化する。まず「食事療法」に関しては、年齢によって指導が大きく異なる。芝浦スリーワンクリニックの板倉広重名誉院長が解説する。
「50代まではカロリーに気を配る必要があり、特に炭水化物の取りすぎには注意すべきです。それに対して60歳以上は老化によって、何もしなくても段々と身体の新陳代謝や免疫力が落ちていきます。また食欲も衰えて食事の量も減りがちになります。そうなると代謝や免疫力がますます落ちてしまう。
よって肉や大豆など、たんぱく質が含まれる食品を積極的に摂取して体力や身体機能を維持することを心がけるべきです」
若い頃より食事量が減ってくることを当たり前と受け止めるのではなく、むしろ注意を払うべきだというのだ。次に、生活習慣の改善というと、まず運動が思い浮かぶ。
「若い世代は運動による体重管理が有効です。できれば毎日の習慣的な運動を心がけてもらいたい」(前出・板倉名誉院長)
一方、60歳以上は「動きすぎに要注意」と指摘するのは北品川藤クリニックの石原藤樹院長だ。
「運動は糖尿病対策として非常に大事ですが、高齢になるほど体に負担の少ない動きを心がけるべきです。過度の運動は心臓に負担をかけたり、関節痛や転倒の原因となります」
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号