「ダブル選挙は衆院の候補者とその後援会がフル稼動することから、参院選との相乗効果で自民党は参院の議席を大きく上乗せする可能性が高い。しかも、参院選では民主新党と共産党との選挙協力が進められているが、衆院選が重なると両党の小選挙区の候補者1本化はできないから、共闘そのものが空中分解するでしょう。

 安倍首相の強引なダブル選挙の狙いはまさに野党を分断し、自民党の参院議席を極大化することにあります」

 改憲に必要な衆参の3分の2の議席を獲得するためなら、ダブル選挙で有権者にパニックが広がってもかまわない。安倍首相の目には、日本の選挙制度そのものの危機を招くことが見えていないのか、それとも「勝つためにはそれでいい」と割り切っているのか。選挙制度に詳しい政治学者の加藤秀治郎・東洋大学名誉教授がこう警鐘を鳴らす。

「選挙は主権者である国民が政治に意思を反映させる唯一の手段。衆院と参院は選挙制度が異なり、本来、別々の時期に選挙を行なって民意を聞く仕組みになっている。そうした考え方からすると、同日選は有権者の投票の権利を侵すことになる。憲法違反と主張する憲法学者も少なくありません」

 安倍首相がダブル選挙で大勝すれば間違いなく歴史に名を残すだろうが、それは同時に日本の選挙制度が瓦解した日としても歴史に刻まれるはずだ。

※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号

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