その後、2012年半ばから鉄道貨物輸送量が前年比でマイナスに落ち込むようになったが、それでも成長率は7%台をキープしていた。「モノ」が動いていないにもかかわらず、経済成長率は維持されている。これは、中国以外では見られない超常現象である。
中国共産党はGDP成長率と鉄道貨物輸送量の乖離について、「製造業ではなく、サービス業が伸びているため」と言い訳している。それならば2013年7~12月にかけて輸送量が大きくプラス化したのに、成長率が7%台に止まったことの説明がつかない。鉄道貨物輸送量が回復したのに加えて、産業のサービス化が進んだならば、成長率は8%、9%台にまで上昇したはずではないか。
また、前述したように、昨年の輸入が前年から14.1%も大幅に減少したのに、GDP6.9%成長というのも奇妙な話だ。GDP統計が比較的信用のおける先進国の過去のデータを見る限り、輸入と成長率には相関関係が見られ、輸入が対前年比でマイナス10%台に達している国が、プラス成長になることはあり得ない。
このように鉄道貨物輸送量や輸入などのデータを見る限り、直近の中国の経済成長率(四半期ベース)は、ゼロ成長どころか、実際にはマイナス2~3%成長と見るのが妥当だ。
【PROFILE】1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立。著書多数。
※SAPIO2016年4月号