◆すべてを変えた「北の湖急死」
このパチンコ裏ガネ疑惑は、本誌が2014年1月24日号でスクープしたものだ(『北の湖の“右腕”への「裏ガネ授受現場」』)。
記事では、あるパチンコ機器メーカーの関係者が、2012年11月に福岡市内のホテルで、K氏に裏ガネとして現金500万円を手渡すシーンを収めた動画の内容を報じた。映像にはK氏が500万円の札束を受け取り、「絶対これ、バレんようにしてくれる?」などと語る姿が映し出されていた。
この現金授受は、某パチンコメーカーによる現役力士が実際の四股名で登場するパチンコ台企画に絡んでのもの。現金を渡した人物は本誌の取材に、契約成立のための裏ガネとして映像に収められた500万円の他に、さらに1200万円の裏ガネをK氏に渡したと証言している。
「映像という動かぬ証拠もあったので協会内も騒然となり、協会の危機管理委員会(委員長=宗像紀夫・元東京地検特捜部長)が調査に乗り出しました。
しかし、当時は北の湖理事長が健在であり、K氏が後に金銭を返還したと主張したこともあって、『問題なし』という結論になった。協会内でも本当にそれでいいのかと思う人はいましたが、異論を唱えられる状況になかった」(前出の協会関係者)
K氏を巡る状況が変わったのは、昨年11月の九州場所中に北の湖理事長が急死してからだ。後を継いだ八角理事長はK氏を協会の中枢から遠ざけるようになる。
「八角親方も、理事長に就任してから初めてK氏のやっていることを不審に思うようになったのでしょう。K氏が協会の内部留保約70億円を使って企業債券を購入するプランを進めていたことや、昨年末にK氏に750万円の特別ボーナスが支払われていることが八角理事長の知るところとなった。北の湖理事長時代に国技館の改修工事の業者選定にK氏の意向が働いていたという情報もあります」(八角派の親方)
そして年が明けて1月末、八角理事長はK氏に対して契約解除通告を突きつけた。
「3月まではK氏への報酬は支払われると聞いていますが、契約解除通告以来、協会にK氏は姿を見せなくなりました」(同前)
北の湖死去とともに協会を追われるK氏。そのK氏が、八角理事長と次の理事長の椅子を争う貴乃花親方に接近していったのである。
※週刊ポスト2016年4月8日号