東莞市内の街並み
街の「浄化」も喉元を過ぎれば、ということなのだろうか。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国の「性都」として世界的な知名度を誇った中国南部の都市・東莞市が大規模な摘発によってその輝きを失ったのは、2014年2月のことであった。
警官約6000人を動員して徹底的に性風俗産業の取締りに乗り出した当局の本気度は、1000人以上の関係者が逮捕され、さらに事前に情報を得て摘発を逃れた経営者を指名手配するほどの執拗さに表れたとされるが、それによって推計30万人が働いていたカラオケバー、マッサージパーラー、クラブ、高級売春などの産業はほとんど壊滅したといわれた。
摘発による影響は甚大で、経済的損失では約500億元(約8350億円=当時)、市の税収という点では10%以上も落ち込んだとされた。
当時、風俗産業に従事していた女性たちが他の大都市に移動する様子が捕捉されるなど、大きな話題となり、二度と東莞が「性都」として復活する可能性はなくなったとも指摘された。
だが、そんな東莞で今年、再び性風俗産業に対する摘発が行われたと報じたのは、『中国新聞ネット』(2016年1月19日)だった。
その中身は春節(旧正月)をはさんだ前後44日間(1月16日至2月28日)を強化期間と設定して取締りを行うというもので、期間は長いがそれほど執拗なものではなかった。実際、ターゲットにされたのは長安聚雅酒店と天鵝張湖酒店の二つだけ。
このニュースに対する人々の興味は、摘発そのものではなく、東莞が「性都」として復活し始めたということにあったのは言うまでもない。