ライフ

胸膜中皮腫の新治療法として注目される「NK4遺伝子」

 アスベストを吸ってから、中皮腫(ちゅうひしゅ)を発生するまでの期間は、30~40年とかなり長い。日本でのアスベスト使用・輸入のピークは1970~1980年頃だが、当時仕事や周囲に工場があったなどでアスベストに曝露(ばくろ)していた人が、今になって中皮腫を発症している。現在でも中国やインド、ロシア、東欧諸国ではアスベストが使用されており、世界的に患者が増える可能性がある。

 中皮腫は肺や心臓、横隔膜などを覆う膜の表面にある中皮細胞に発生するがんだ。がんができる場所により、胸膜中皮腫、心膜中皮腫、腹膜中皮腫があり、中でも胸膜中皮腫が多い。胸膜中皮腫は進行すると、咳、胸痛、呼吸困難が出るが、初期は症状が乏しいことが多く、早期発見が極めて困難だ。

 千葉大学医学部附属病院呼吸器内科の多田裕司医師に話を聞いた。

「悪性胸膜中皮腫は、がんが広範囲のことが多く、手術は侵襲が大きくて術後に患者の体力が急激に低下することもあります。また抗がん剤は、シスプラチンとペメトレキセドの2種だけが保険適用です。肺がんなどで効果をあげている分子標的薬は、中皮腫では残念ながら、ほとんど効果はありません。そのため新しい治療法として試みているのが、NK4遺伝子治療です」

 NK4というのは、がん細胞を増殖させ、がんに栄養を引き込む血管を作るHGFという物質を抑えるNK4タンパクのことだ。このNK4をウイルスに搭載し、体内に注射すると、がん細胞にウイルスが感染し、死滅する。NK4をがん細胞まで届ける運び屋がアデノウイルスベクターだ。アデノウイルスは、夏風邪などの原因となるウイルスで、自然界に多く存在する。

 このアデノウイルスを無害化したものに、遺伝子組み換え技術でNK4分子を作る遺伝子を搭載する。アデノウイルスは、増殖している細胞によく感染する性質があり、正常細胞よりも増殖が活発ながん細胞に感染する。このウイルスベクターの作成と品質の管理には高度な技術力を要するが、支えているのは日本の複数の大学の連合チームだ。

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン