田端駅構内の開業120周年記念レリーフ。気づく人が少ない


 櫻井さんのスタンプで、「山手線で一番無名!」とイジられているが、それはあくまでも一般的な話。実は鉄道ファンの間では、田端駅は”聖地”とも称されるほどの知名度を誇る。

 その所以は、田端駅を一歩出れば一面に鉄道だらけの光景が広がっているからにほかならない。駅前にはJR東日本支社があり、田端運転所やJR貨物田端信号場駅庁舎なども点在。さらに、5~6分歩けば尾久操車場もある。田端は、鉄道ファンにとって夢のような空間なのだ。

 櫻井さんは鉄道ファンではないため、鉄道をモチーフにしたスタンプはつくらなかったが、今後リリースするスタンプには鉄道をテーマにしたモノも考えていると言う。

 LINEスタンプのように鉄道とは無関係なアプローチで田端を活性化させようとする櫻井さんのような人がいる一方で、真正面から鉄道を扱って田端を活性化させようとする人たちもいる。

 地域住民などで組織されている「東田端まちづくり協議会」は、鉄道の街・田端を積極的に活用したまちづくりを目指している。同協議会の藤田昌弘副会長は、こう話す。

「田端駅周辺を大規模開発しようという声は、1978年頃から地域住民の間で起こりました。東北新幹線の田端車両基地を縮小し、さらに貨物の田端操駅を移転させて、空いたスペースを大規模開発しようという計画でした。住民からの請願でしたが、当時の北区長や都議、区議も賛同し、政府などにも働きかけをおこないました。運動が本格化してくると、区長から、まちづくり協議会を設立した方がいいとアドバイスされたので、2003年に東田端まちづくり協議会を設立したのです」

 同協議会は、ミニSLを運行する”ぽっぽまつり”を開催したり、鉄道のモニュメントを制作して街に飾ったりしている。そうした取り組みが、鉄道の街・田端のPRに一役買っている。それらの活動のひとつとして鉄道八景を選定し、モニュメントの制作・設置を進めている。現在、鉄道八景は3か所の整備が完了した。

「東田端まちづくり協議会では”東田端レールパーク”構想を掲げて、田端の貨物駅から隣接する尾久操車場にシャトル列車を走らせたりできないかと駆け合ったこともあります。また、北区役所も協議会の動きを後押しするかのように、”今日は電車に会いに行こう!”というパンフレットを制作して、広く田端を鉄道の街としてPRしてくれています」(前出・藤田さん)

 同パンフレットはビューポイントが紹介されているだけではなく、小さな子供連れでも安心して散策できるようにトイレやベンチ、おむつ替えベッドのある場所まで明記されている。

 先日ラストランを迎えた寝台特急「カシオペア」や昨年に引退した寝台特急「北斗星」の車両基地も田端にあった。カシオペアや北斗星が引退したことで、カメラを持って田端を訪れる鉄道ファンの足は遠のいてしまうだろう。

 それだけに、鉄道の聖地・田端を活性化させようと奮闘する地域住民のみなさんにはエールを送りたい。

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