「基本的に芸術と向き合うことは、これまでの自分の経験や価値観などとの向き合いという意味合いもあり、そこに自己投影されます。そして、自分の心のさまを見つめるきっかけになり、誰の影響も受けない自分自身の本質や価値観の気づきから、情緒を大切にしたいという芽生えや精神的な安定をもたらすのではないでしょうか」(小高さん、以下「」内同)
実際、塗り絵にはさまざまな効果があるといわれている。ストレス解消、リラックス(精神安定)、集中力アップ、脳の老化防止、自己理解の深まり、創造性を高める、色彩感覚が養われる、などだ。
「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京)では、塗り絵は脳の血流をアップさせる認知症対策のひとつとしても紹介された。自律神経は色に影響されることもわかっており、自律神経を整える塗り絵も発売されている。
また、ひとつの作品を仕上げることは達成体験となる。達成体験を積み重ねることで、「~できるだろう」と確信する『自己効力感』が強くなっていくため、新しいことにチャレンジする精神力や意欲が湧いてくるという効果にもつながると、小高さんは語る。
「身体動作自体にも効果はあります。イライラしてるときに、クレヨンのような柔らかい画材で塗りつぶして発散したり、逆に硬い色鉛筆を使って優しく表現したいときは、自分の繊細な部分を大事にしたい気持ちということも。きれいになめらかに塗れると、自分の中に癒しや穏やかさを取り戻す効果もあります。
筆圧の強弱でも自分の気持ちを理解することができます。『今自分は怒ってるんだ』とか、『癒される』など感覚を認識して、感情を受け止められようになっていきます。そうやって自分自身を内観することが、ストレスの解消につながるのです」
「良い」「悪い」の評価がなく、固定観念に縛られず自由な色づかいで、好きなように表現できるのが塗り絵の良さ。手軽にできるため、時間がなく、どこかに行ってストレス発散というわけにはいかない人にも最適だ。ストレスフルな日常に疲れてしまったとき、ちょっとした気分転換にいいかもしれない。