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「かかりつけ薬剤師制度」で薬局のブラック企業化を懸念

 今年の4月は、2年に1度の診療報酬改定の時期にあたり、医療の仕組みが変わる。薬局の改定の目玉は「かかりつけ薬剤師制度」の新設と、「お薬手帳の料金改定」だ。信頼できる薬剤師選びが重要となるが、これがなかなか難しい。医療、薬事に関する問題に詳しい薬剤師の高橋秀和さんは、次のように語る。

「本来、薬剤師は医師から独立した存在。処方薬においては、『この薬でない方がいい』『あなたが自覚している症状は副作用の可能性が高い』といったアドバイスをし、医師とも協議すべきですが、現状は医師の立場が強く、その顔色をうかがうあまり、そうしたアドバイスはしにくい。

 市販薬においては、薬剤師に医療ではなく販売スキルを求める薬局も少なくなく、患者の健康相談はおすすめ商品の販売につなげられがち。薬剤師は本来の職務に立ち戻り、患者さんの健康利益を第一に考えなければなりません。

 また、患者さん側も『病院の近くだから』『すぐに薬を出してくれるから』ということを薬局選びの条件の一部としているかたも多いかもしれませんが、本来の業務をきちんと行っていて信頼できる薬局、薬剤師を見極めて選んでほしい」(高橋さん以下「」内同)

 すでにかかりつけ薬剤師を持つ習慣が定着している欧米では、患者と薬剤師は互いに「私の薬剤師」「私の患者」と呼んで、信頼関係で結ばれている。しかし、今回の制度では、かかりつけ薬剤師を選んでも、通う薬局を1か所に定めなければならないという決まりがないため、“過剰な”利用が急増するおそれもある。

「24時間、担当患者からの電話に対応するという業務は、夜勤ではなく、携帯での対応となることが多いため、多くの薬剤師からストーカー被害を憂慮する声やブラックな働き方だという声が上がっています。ただ、健康や投薬においてサポートが必要な患者さんがいることも確か。困ったときは遠慮する必要はありませんが、『お金を払っているんだから、いつ電話したって何を言ったっていいだろう』という利用の仕方は避けていただきたいですね。

 また制度が運用される中で、不適切な投薬やアドバイスによる被害が発生し、裁判になった場合、責任は調剤や販売を担当した薬剤師か、かかりつけ薬剤師か、どう判断されるかわかりません。現段階では完全な制度とは言い切れません」

※女性セブン2016年4月28日号

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