若い世代や子育て世代の投票率が下がるなか、投票に行く多くは高齢者。その高齢者に“エサ”をバラマクつもりなのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが言う。

「どこからどう見ても選挙対策のお金です。しかも、その3300億円は、国民が納めた税金ですよ。必死に払った税金で選挙対策とはあまりに国民をバカにしています。そもそも、1度きりの3万円で消費活動や生活がどう変わるというんでしょうか」

 政府はこうした批判を受けてか、3月末に若い世代の低所得者に対する“救済”として、生活必需品購入のための商品券交付を検討すると発表したが、それがどれほどの役に立つというのだろう。

 一方、安倍首相が「絶対に実現したい」と、主張しているのが「憲法改正」だ。しかし、草案(中身)については十全な説明をしていないため、よくわからないまま、いつの間にか変わってしまう危険性もある。危惧されているのが、新たに加わった「緊急事態条項」の内容だ。

 外部からの武力攻撃、内乱、自然災害などの緊急事態において、内閣は国会を通さずに法律と同じ効力のある政令を制定することができる、というもので、社会学者の上野千鶴子さんは「最も危険な条項」だと指摘する。

「震災などの緊急時に指揮を執りやすいように、といいますが、それは憲法ではなく法律で決めればいいことです。

 怖いのは、ドイツのワイマール憲法にも同じ条項があって、ヒトラーはこれを乱用して独裁政権を生んだといわれています。緊急事態条項を追加すれば、日本だって同じようになる可能性がないとはいえません」(社会学者の上野千鶴子さん)

 2012年の総選挙の前、自民党は「TPP断固反対」を掲げ、ポスターまで作った。結果はどうか。TPP交渉はどんどん進み、国内農家へ大打撃を与えている。選挙前に都合のいいことだけを口にするのは安倍政権の常套手段なのだろうか。

「安倍政権は、選挙前はいいことばかり言って、選挙後にいとも簡単に約束を破ったり、国民にとって負担となることを断行します。

 専業主婦の負担を増やす配偶者控除の廃止も、選挙が終われば取りかかるのではないでしょうか。今は選挙前だから黙っているのだと思いますが、かねてからやりたいと宣言していたのを忘れてはいけません」(上野さん)

※女性セブン2016年5月5日号

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