ビジネス

吉野家だけではない 「うまい、やすい、はやい」からの脱却

吉野家は牛皿専門業態にも着手

 牛丼チェーン店が次々と新しい業種の開発に取り組んでいる。その先鋒は吉野家だ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。

 * * *
 九州を襲った地震で大きな被害を受けた熊本県益城町で、牛丼チェーンのキッチンカーが炊き出しを続けている。一方、本部のある東京では、吉野家がサンドにカフェ、そしてディッシュ──。次なる一手を模索するかのように、続々と新業態店をオープンさせている。

 大きな動きがあったのは、昨年10月。東京・青山にオープンしたお米サンド専門店「ファンガス・ライス・サンドウィッチーズ」だった。きのこや野菜を使ったライスサンドで顧客の健康志向を意識した業態だ。以降、吉野家は続々とテストマーケティング業態店舗を立ち上げた。12月には西新宿に牛皿専門店「牛皿一丁」をオープン。店名に掲げた「牛皿」も同店限定の「別撰」という注文ごとに煮上げるメニューも用意した。

 今年に入ってからの展開はさらに意欲的だ。3月11日には、改装中だった恵比寿駅前店を黒い看板にかけ替えた。オペレーションも異なる。カフェ風の店内で、先に注文と会計を済ませるファストフード方式。卓上に紅生姜や七味唐辛子はないが、電源のコンセントはある。「吉呑み」業態のアルコールやつまみのメニューを充実させ、ごく一部の店舗でしか提供していなかったソースカツ丼も展開されている。

 その一週間後、3月18日には横浜市青葉区の「たまプラーザテラス」内に「ライブキッチン yoshihnoya」をオープンさせた。土地柄、ファミリー層を意識した店舗で「お店でカット」した手づくりサクサクフライドポテトを前面に押し出したメニュー構成だ。牛丼もあるが注文は「牛丼ディッシュ」(牛丼・マリネサラダ・ポテト)などのセット方式が基本。ほか「ビーフステーキセット」(980円)や「チキンステーキセット」(780円)などガラス張りのキッチンに見える巨大な鉄板を活かしたメニューもある。

 もっともこうした新業態の展開は、吉野家にとって珍しいことではない。郊外やフードコート内には青い看板の「そば処吉野家」もあるし、昨年の「ちょい呑み」ブームの魁となった「吉呑み」も2013年に神田の実験店舗での成功を受けてのものだ。一方、吉呑みとほぼ同時期にスタートさせた一人鍋専門業態の「いちなべ家」はすでに看板を下ろしている。それ以前に、門前仲町や蒲田などで展開していた牛丼専門業態の「築地吉野家」ブランドもいまはない。

 実験店舗で小規模なスタートを切る。勝機があると見るや一気に拡大し、見込みが薄ければ撤退する。そうした手法自体は、もともと吉野家の得意とするところだ。だがここ最近の吉野家は、過去に例を見ないほど新業態の開発に意欲的だ。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン