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「感情表現」が乏しいと社会生活で命取りなことも

 元プロボクサーで慶応大学法科大学院生だった小番一騎被告(25才)。彼は昨年8月、妻の勤務先だった東京都港区にある弁護士事務所を急襲。妻に肉体関係を強要したとして、上司の国際弁護士(42才)を複数回殴った上で、局部を枝切りばさみで“チョッキン”。傷害と銃刀法違反に問われ、昨年10月から裁判が続いている。

 その猟奇的な犯行のもさることながら、注目されたのはその妻の発言だ。自分のために凶行に走った夫のことを「ペットのようだと思っていた」と暴露。また修羅場のハイライトでさえ、「あ、切っちゃった」と一言だった。精神科医の片田珠美さんはこう説明する。

「この妻は決定的に想像力が欠如している。自分の言動で相手がどう反応するのか、どう行動するのか想像できず、他人の痛みに共感することができない。夫をペットだと思うことで感情を切り離し、局部切断にしても“切った”と思うだけで、上司がどれだけ痛くて怖い思いをしているのかがわからないんです。何をしても、何を見ても現実感がない『離人症』の可能性が高いと考えられ、おそらく『アレキシサイミア(失感情症)』に陥っているのでしょう」

 この聞き慣れない「アレキシサイミア」という医学用語は、楽しい時にワーッと喜べなかったり、怒りたいときに怒れなかったり。想像力が乏しく、自分の感情に気づくことも、表現することも難しい状態を指す。

 この「アレキシサイミア」は、職場のなかで顕著な社会問題となって表れている。先頃、7社で272人が退社を無理強いされたとして注目を集めた、「ローパー社員」問題がそれだ。ローパフォーマーとは、戦力外社員を意味する。企業の査定項目には、「社内のコミュニケーションに問題がある、周囲の社員とうまくやれない社員」「組織運営上、問題となる可能性がある社員(協調性がないなど)」といった勤務態度も含まれている。

 企業側の問題はひとまず横に置き、感情表現の乏しさが社会生活で命取りにもなりかねない実情が浮き彫りとなった。片田さんが言う。

「アレキシサイミアとは、一種の防衛機制です。極度に困難な状況に陥ると最初は誰もがストレスを否認しますが、やがて多くはそれを乗り越えようとする。ですがアレキシサイミアの人は否認の段階でフリーズして自分の感情と向き合えないんです」

 そう考えると、自分はもちろん、息子や娘、孫たちのことも急に心配になってこないだろうか?

※女性セブン2016年5月26日号

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