種子骨靭帯炎。おそらくアメリカでも気になっていたはずですが、メンタルの強さで我慢していたんですね。緊張が解けたとたんに痛み出すことはよくあります。走ると痛がるので、放牧後の調教も進みません。これでは期待されたパフォーマンスが出せずに可哀相な結果になってしまう。苦渋の判断でしたが、繁殖牝馬としての価値が飛び抜けて高くなっていたこともあり、早すぎる引退となったのです。
祐一君は雑誌のインタビューで「僕が乗った中での最強牝馬。それも群を抜いていた」と語っています。母親としてもエピファネイア、リオンディーズなど、2頭のGI馬を送り出しました。
府中の2400メートルを走るオークスは、3歳牝馬にとっては苛酷なレースといわれ、かつては勝ち馬がその後低迷していたこともありました。しかし近年はブエナビスタ、ジェンティルドンナ、ヌーヴォレコルトなどその後牡馬相手に活躍するようになりました。そういった見極めが叶う好レースです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GⅠ勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年5月1日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年5月27日号