東京都における廃棄物の処理・処分に関する紛争である「東京ゴミ戦争」。なかでも江東区は江戸時代から都内の処理された(あるいは未処理)ゴミを埋め立てる最終処分場を抱えていたことから問題は深刻化していた。
それが「夢の島」。ハエが大量発生し、駆除するために焦土作戦が実行されたこともあった。それから約50年。現在「夢の島」は公園として利用され当時の面影はない。しかしゴミ戦争は新たな局面を迎えている。第四代夢の島とも呼ばれる「中央防波堤埋立地」の帰属を巡って、これに隣接している江東区と大田区の対立が激化しているのだ。
「近年、コンテナ輸送として利用価値が高まったことから両者の“領有権争い”に火がついたなか、東京五輪の競技予定地にも選ばれたことから闘いがピークに達したんです」(全国紙記者)
双方の言い分を聞いてみよう。まずは江東区から。江東区政策経営部港湾臨海部の担当者が言う。
「悪臭やハエの大量発生、清掃車両による交通渋滞、ゴミや汚汁の飛散などのゴミ問題は長年にわたり区民を苦しめてきました。将来的にも終末処理に向かう清掃車両は当区を通過します。区民の忍耐と犠牲の上に埋立地が成り立っているので、江東区に帰属するのが妥当です」
江東区民というだけで“ゴミ臭い”といわれた時代もあった。当時のことを知る人は、「風が吹けば悪臭が漂い、ハエが何百匹も飛んでいた」と振り返る。
一方、大田区の主張はこうだ。
「埋立て以前から、あの海域で大田区民が海苔の養殖を行っていました。昭和初期には区画漁業権を持った大田区民の生産と生活の場でした。ところが、東京都が埋め立てを決め、断腸の思いで区画漁業権を放棄した歴史的沿革があるのです」(大田区企画課課長)
両者は主張を譲る気配はない。協議が成立しなければ都に調停を申請することになる。
※女性セブン2016年6月30日号