会場には、こちらも幅広い年齢層の卒業生約600人が集まり、陛下ご到着のアナウンスが流れると自然と人垣が割れ、道が開かれた。会場奥に席が用意されていたが、陛下は着席されることなく参加者たちと和やかに談笑された。
「陛下の同級生も10人ほど出席していたそうです。歓談中には当時が思い出されたのか“そうそう、そんなこともあったね”と楽しそうにお話しになっていました。その日、言葉を交わされた同窓生は100人ほどいたのではないでしょうか」(前出・学習院関係者)
初等科時代から大学まで陛下の同級で、同窓会にも参加した元共同通信記者の橋本明氏が当時をこう振り返る。
「陛下は初等科の先生の言葉を心に刻まれていらっしゃるようでした。たとえば、国語の教科書に『サイタ サイタ サクラ ガ サイタ』と始まる一文があったのですが、先生から“心して、歌うように読みなさい。こんな美しい詩はない”と指導していただいた。それを陛下は今でもよく覚えていらっしゃいました。
当時、熱心に読書をされている陛下にクラスメートが“何を読んでいるの?”と尋ねると“アンデルセンやグリム童話だよ”と教えてくださるわけです。お返しに私たちは冒険小説を貸してさしあげたりしたこともありました」
陛下は、そんな充実した日々を思い起こされていたのだろう。楽しい時間はあっという間に過ぎ、1時間ほどで会場をあとにされた。当初の予定よりお帰りが10分ほど遅れてしまったことからも、陛下の名残惜しさが伝わってくる。
撮影■雑誌協会代表取材
※女性セブン2016年7月21日号