18歳選挙権がスタートする一方で、特定思想を植え付ける洗脳まがいの「政治教育」に突っ走るケースも続出しているという。そんな日本の教育現場を蝕む偏向教育の数々をフリーライターの森下毅氏がレポートする。
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特定思想の刷り込みは、「反原発」でも顕著だ。今年の教研集会では、北海道北広島市で行われた原発に関する授業が報告された。
そのテーマは、ずばり「反原発をめざした平和教育」。特徴は小学校から中学校まで体系的に「反原発」を刷り込むカリキュラムを設定していることだ。
小学校低学年で電気の仕組みを学び、東京電力福島第一原発事故の恐ろしさを知る。中学年ではチェルノブイリ事故など世界で起きた原発事故について知り、原発に関する自分の考えを持つ。高学年では原発の問題点を知り、原発の今後についての考えを深める。そして最終段階の中学校では、福島を含む原発事故の実態を知り、原発の是非を考えるという流れだ。これほど体系立てて反原発意識の醸成を促す学校は全国でもまれだろう。
泊原発に近い北広島市は反原発運動も強いが、学習計画からは児童生徒を再稼働反対運動に動員しようという思惑も透け、教育基本法が求める学校の政治的中立性ははなから放棄しているようだ。こうした露骨な反原発教育について、同市教委に見解を求めたところ、「実際の授業では原発のデメリットだけでなく、メリットについても取り上げており、原発について多様な見方ができるように授業が進められたと確認している。政治的中立性の確保については、今後も指導を継続していく」と回答があった。
これら以外にも偏向教育が実施されているケースは枚挙に暇がない。生徒に対し特定秘密保護法反対のハガキを書くよう煽る、オスプレイの配備反対を叫ぶ、憲法改正を目指す安倍晋三首相や天皇制を批判する、安保法制を戦争法と呼び、小学生に賛否のアンケートを実施する……。
【PROFILE】森下毅●1970年東京都生まれ。学校現場や行政機関に幅広い取材源を持ち、経済から教育まで幅広く取材、執筆している。
※SAPIO2016年8月号