国内

広島 早い復興のカギはお好み焼きと広島カープだった

街を支え、訪れる旅人も魅了する広島お好み焼き

〈71年前の雲一つない朝、死が空から降りてきた〉

 印象深い言葉で始まるオバマ大統領のスピーチは、世界中の人々の記憶に残るものだった。原爆投下の「あの日」から71年。広島の街は見事に復興を遂げた。その象徴は「お好み焼き」「広島カープ」「広電」なのだそう。さらに、今年は原爆ドーム、嚴島神社の世界遺産登録20年目。世界中が注目するこの街の“今”を旅する。

 被爆後「今後75年は草木も生えないだろう」と言われた広島。驚くほど早い復興を可能にしたのは、交通網の回復と庶民の胃袋を満たした「お好み焼き」。そして、“生きる希望”を与えた「広島カープ」だった。

 様々な人種、年齢の人びとが行き交う平和記念公園。爆心地からわずか数百m、71年前には“地獄”と化した場所には今、平和そのものの光景が広がっている。

 近くの原爆ドーム前電停から路面電車に乗った。被爆3日後に“一番電車”を運行し市民に希望を与えた「広電」だ。所々火の手が上がる街を、そろそろと歩くように運行したという電車はいま、力強いモーター音を響かせながら石畳の軌道を進んでいく。

「成人男性はみな戦地に赴いていたため“一番電車”の運転士は16才の山崎政雄さん、車掌は広島電鉄家政女学校の生徒でした」と、広島電鉄総務部・日松一雄さん。

 1950年に誕生した「広島カープ」は、娯楽が少なく貧しい時代に、熱狂的に受け入れられた。球団創設時からのファン“元祖カープ女子”草田カズヱさん(86才)は、15才のときに爆心地から㎞の地点で被爆、両足の太ももから指先まで大やけどを負った。

「当時は被爆した女性を差別する人も多くて。私は娘盛りにミニスカートをはくこともできず、結婚して子どもができても海水浴につれていけなかった。主人と行く野球観戦だけが楽しみでしたよ。選手のがんばりに生きる希望をもらいました」と話す。

 市民の心を支えたのが広島カープなら胃袋を支えたのは「お好み焼き」だった。

「戦後は食べるものがなかったから、安くて腹いっぱいになるお好み焼きが重宝されました」と、広島お好み村組合の河口富晴理事長(83才)。

「街が復興していくにしたがってお好み焼きの具材も増えてねぇ。肉や卵、そばが当たり前になったのは1970年代かな。今は海鮮やらチーズやら…、外国人にも受けるトッピングを各店で工夫していますよ」と笑う。

 戦後、見事に蘇った広島の街。復興を支えた広電、広島カープ、お好み焼きは、今もこの街を支え、訪れる旅人を魅了する。

※女性セブン2016年8月11日号

関連記事

トピックス

スタッフの対応に批判が殺到する事態に(Xより)
《“シュシュ女”ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に》K-POPフェスで韓流ファンの怒りをかった女性スタッフに同情の声…運営会社は「勤務態度に不適切な点があった」
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(時事通信社/読者提供)
《動機は教育虐待》「3階建ての立派な豪邸にアパート経営も…」戸田佳孝容疑者(43)の“裕福な家庭環境”【東大前駅・無差別切りつけ】
NEWSポストセブン
未成年の少女を誘拐したうえ、わいせつな行為に及んだとして、無職・高橋光夢容疑者(22)らが逮捕(知人提供/時事通信フォト)
《10代前半少女に不同意わいせつ》「薬漬けで吐血して…」「女装してパキッてた」“トー横のパンダ”高橋光夢容疑者(22)の“危ない素顔”
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン