安倍首相は2014年の衆院選、そして今夏の参院選で国民の信任を得たと言う。実際は民進党などの野党が自滅しただけだが、選挙での勝利を、安保関連法やアベノミクスなどの“錦の御旗”にしている。
実はこのやり方は、かつてのナチス・ドイツと同じである。ナチスのアドルフ・ヒトラーも国民が困窮する中で失業・景気対策や移民排斥を訴え、選挙のたびに国民の支持を拡大して強大になっていった。
やはり自民党の憲法改正草案に盛り込まれて改憲の焦点となっている「緊急事態条項」は、まさにナチスを彷彿とさせる。
その中では、我が国に対する外部からの武力攻撃や大規模な自然災害などが起きた時に首相が緊急事態を宣言すれば、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を定めたり、首相が財政上必要な支出を行なったり、地方自治体の長に対して必要な指示をしたりすることができ、国民は国や公の機関の指示に従わなければならないとしている。
これは1938年に制定された「国家総動員法」のようなもので、すこぶる危険だ。現在のドイツにも緊急事態条項があるというが、ナチス台頭の反省に基づいて厳しい条件が付いており、自民党の憲法改正草案とは似て非なるものである。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号