その「なんだかんだ用事」の筆頭はアルバイトだ。部活、サークル活動は縮小傾向が続いているのだが、バイトでせわしない学生は増えている。自分の小遣い稼ぎのためだけでなく、生活費のために否応なく働いているケースも珍しくない。
インテリジェンス社の「anレポート」(2016年3月調査実施)によると、アルバイトをしている学生の1週間のシフト数でもっとも多いのは「3日~4日」で49%、平日1日のシフトの平均勤務時間のほうは、3時間以上5時間未満が42%となっている。すでに社会人である読者は、自分の学生時代を思い返して数字を見直してほしい。週3~4日、1日あたり3~5時間のバイトをしていたという人は、そんなにはいないと思う。
また、「ブラックバイト企業対策プロジェクト」が行った調査(2014年夏実施)もある。それによると、大学生のアルバイトで最も多かった週あたりの労働時間は「15時間以上、20時間未満」の27.7%。「20時間以上」の回答も28.2%だったとのこと。この調査では、残業代が支払われないといった不当な扱いを経験した学生が全体の約67%だったともいう。
授業に縛られ、バイトで絞られ、なおかつ最近の大学生は移動に時間を取られている。進学先の地元志向が強まり、実家暮らしの大学生が本当に増えているのだが、そのぶん遠距離通学者も増えている。
独立行政法人日本学生支援機構の「平成26年度学生生活調査」では、自宅通いの大学生の通学時間は、全国平均で片道67.4分、東京圏だと72.5分。往復2~3時間を費やしているのが当たり前なのである。片道「91~120分」も全国で19.5%、東京圏だと22.7%いる。自宅から大学まで片道「121分以上」という毎日が小旅行状態の学生も、全国で6.0%、東京圏6.3%と「例外」扱いできない程度に存在する。
自宅通いの学生に話を聞くと、「経済的にきついから」「親に迷惑をかけたくないから」とたいてい言うが、月に何万円も通学定期代がかかっているのはどうなのか疑問に思うことがある。マンションやアパート暮らしの家賃が問題なら、シェアハウスがあるじゃないか、と言いたくもなる。実は「生活の面倒を見てくれる親と一緒のほうが楽だから」という理由が一番大きいように感じる。
まあ、その是非はさておくとしても、結果、今の大学生は忙しいのだ。よく学び(?)、よく働き、よく移動しているからである。
大学受験まで、部活と定期テストと入試対策でぎちぎちの生活を送ってきた人が大半だろう。難関大の受験生ほどそうだったはずだ。大学に入ったなら、好きなことを存分にやりたい、今までの息苦しさから解放されたい、という思いで頑張っている受験生は今だってたくさんいる。でも、その希望が叶って大学に入ったら、あれれ、ゆっくりものを考える時間もないぞ、となる罠が待ち構えているのだ。
だから、オープンキャンパスで、その大学や志望している学部・学科の学生の「忙しさ」を直接当人たちに聞いてほしい。許容できる忙しさかどうか、「忙しくても充実していますよ」という言葉が本音かどうか、感じ取ってくるのだ。
我が子のオープンキャンパス見学についてくる保護者が普通にいる。それはそれで「どうなの?」と言いたくなるが、どうせ出かけるなら親も昔と今のキャンパス生活の違いをしかと確認してきてほしい。
親の学生時代は「大学のレジャーランド化」がよく指摘されていたものだ。今、大学がそんな調子でいたら、冗談でなく潰れる。遊んでいる場合じゃないキャンパス事情は、息子さんや娘さんが生きていくこの国の余裕のなさそのものなのだ。