国内

田中角栄の言葉は人間心理の機微を知り尽くした行動伴ってた

新潟の自宅には支持者がよく押しかけた(写真:山本皓一)

 田中角栄は「人たらし」と言われた。会った人の心を瞬時につかみ、反対派でさえも虜にする人間的魅力を備えていた。それは言葉だけの力でもカネだけの力でもない。「人を操る心理学」を熟知していたからだろう。角栄の数々の名言の背後にある人心掌握の哲学を探求していこう。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
〈役人の顔や人脈はよく覚えておけ。〉

 角栄は高等小学校卒の学歴しかなかったが、それでも東大法学部出身のエリート官僚たちを手足のように動かして仕事ができたのは、彼らが何に喜ぶか、その心理を熟知していたからだ。

 角栄はエリート官僚たちの顔から入省年次、家族構成まで全部記憶していた。新人時代から角栄の薫陶を受けた渡部恒三・元衆院副議長は「あんまりよく覚えているもんだから、田中のオヤジに東大法学部同窓会の事務局長みたいだと言ったら、ひどく怒られた」と本誌に語ったことがある。

 ある正月、東京・目白の田中邸には政治家、役人たちが年始の挨拶に集まっていた。その中に地味な1人の人物がいた。建設省の官僚OBだった。

「この人はな」

 角栄が若手議員たちに彼の仕事ぶり、いかに有能だったかを語って聞かせると、周囲の見る目が変わった。

「あのときは、一緒に徹夜して、いろいろ法律を作ったよなあ!」

 政策づくりや行政実務を担う“黒衣役”の官僚にとって、政治家に自分のやった仕事を評価してもらうことが存在証明になる。田中邸に来ていた現役官僚たちが、角栄の官僚OBへの言葉を聞いて“この人なら”と思ったことは想像に難くない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《デートはカーシェアで》“セレブキャラ”「WEST.」中間淳太と林祐衣の〈庶民派ゴルフデート〉の一部始終「コンビニでアイスコーヒー」
NEWSポストセブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン
食欲が落ちる夏にぴったり! キウイは“身近なスーパーフルーツ・キウイ”
《食欲が落ちる夏対策2025》“身近なスーパーフルーツ”キウイで「栄養」と「おいしさ」を気軽に足し算!【お手軽夏レシピも】
NEWSポストセブン
Aさんは和久井被告の他にも1億円以上の返金を求められていたと弁護側が証言
【驚愕のLINE文面】「結婚するっていうのは?」「うるせぇ、脳内下半身野郎」キャバ嬢に1600万円を貢いだ和久井被告(52)と25歳被害女性が交わしていた“とんでもない暴言”【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
遠野なぎこと愛猫の愁くん(インスタグラムより)
《寝室はリビングの奥に…》遠野なぎこが明かしていた「ソファでしか寝られない」「愛猫のためにカーテンを開ける生活」…関係者が明かした救急隊突入時の“愁くんの様子”
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《独特すぎるゴルフスイング写真》“愛すべきNo.1運動音痴”WEST.中間淳太のスイングに“ジャンボリお姉さん”林祐衣が思わず笑顔でスパルタ指導
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
「どうぞ!あなた嘘つきですね」法廷に響いた和久井被告(45)の“ブチギレ罵声”…「同じ目にあわせたい」メッタ刺しにされた25歳被害女性の“元夫”の言葉に示した「まさかの反応」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)が犯行の理由としている”メッセージの内容”とはどんなものだったのか──
「『包丁持ってこい、ぶっ殺してやる!』と…」山下市郎容疑者が見せたガールズバー店員・伊藤凛さんへの”激しい憤り“と、“バー出禁事件”「キレて暴れて女の子に暴言」【浜松市2人刺殺】
NEWSポストセブン
先場所は東小結で6勝9敗と負け越した高安(時事通信フォト)
先場所6勝9敗の高安は「異例の小結残留」、優勝争いに絡んだ安青錦は「前頭筆頭どまり」…7月場所の“謎すぎる番付”を読み解く
週刊ポスト
目を合わせてラブラブな様子を見せる2人
《おへそが見える私服でデート》元ジャンボリお姉さん・林祐衣がWEST.中間淳太とのデートで見せた「腹筋バキバキスタイル」と、明かしていた「あたたかな家庭への憧れ」
NEWSポストセブン