8月15日、靖国神社。日本はおろか、世界が注視するのは首相や閣僚が参拝するか否かである。一方、左右イデオロギーの激突の場であることを報じるメディアは少ない。日本で一番“特別な日”の水面下で展開される、不可思議な現象に評論家の古谷経衡氏が迫った。
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熱狂には二種類ある。馬鹿馬鹿しい熱狂と、そうではない熱狂の二者だ。8月15日。先の大戦で不幸にも戦没した英霊を顕彰するという、荘厳な祈りの空間に最も似つかわしくない熱狂が、まさに九段・靖国の周辺で繰り返されていた。
反天連(反天皇制運動連絡会)。1984年に結成された、天皇制打倒と靖国神社解体を標榜する新左翼グループである。2009年頃より毎年、靖国神社近傍の九段・水道橋付近で「靖国いらない!」のシュプレヒコールを上げる。
これに対し、在特会(在日特権を許さない市民の会)や各種右派団体がカウンターとばかり「殺せ! 殺せ! 反天連!」を掛け声に同所に集結する。
毎年8月15日の「恒例行事」と化した反天連VS右翼の騒擾は、両者のデモとカウンターの参加者をはるかに超える人数の、機動隊員や公安職員らが動員される「真夏の風物詩」だ。
8月15日午後2時半に靖国神社に到着。本殿参拝のため参道を歩いていると、思想や主義を異にする各種団体のブースが目に付いた。日本会議から台湾研究フォーラム、なかには軍服姿で人目を惹く男たちの姿もあった。
午後3時半。反天連デモ出発前に決起集会が開かれる在日本韓国YMCA会館(水道橋)に向かった。
3階の会議室は、異様な熱気に包まれていた。参加者は100名にも満たない60~70名ほど。ビルの周りをぐるりと機動隊と公安職員が取り囲んでいる。天皇の戦争犯罪を問う、という型通りの趣旨説明が終わると、三々五々参加者たちはYMCA会館前に躍り出て整列する。