「それまでバブル景気に浮かれていた国民に、崩御の前後に長く続いた自粛ムードによって金融用語で言うセンチメント(市場心理)の変化が起きてしまった。
今回、今上天皇が生前退位のお気持ちを表明されたことは、国民に強いインパクトを与えた。皇室典範改正などの微妙で時間がかかる制度見直しは国民にセンチメントの変化を促すでしょう。天皇のお気持ち表明を全国紙のなかで最も大きく取り上げたのが経済紙である日経新聞であったことは、そうした変化の始まりと見ています」
昭和の終わりの松下幸之助氏の死と、平成の終わりの鈴木敏文氏の退任も、それぞれの時代の経済の質的変化を象徴している。
『経済界』編集局長の関慎夫氏は、1989年はそれまでの「ものづくり国家・日本」が転換点を迎えた年だったと分析する。
「大量生産でいいものを安く消費者に提供するというのが昭和の経営者である松下氏の経営哲学でした。それに対して平成の鈴木敏文氏はバイイングパワーで大量に安く商品を仕入れ、消費者のニーズを予測しながら店頭に並べるというコンビニのビジネスモデルを作り上げて店舗網を拡大させた。
しかし、現在はコンビニの店舗数は飽和状態に達し、アマゾンなどのネット通販が主流になりつつある。1989年が『モノをつくって売る』時代の終わりなら、2016年は『店をつくって売る』時代の終わりかもしれません」
※週刊ポスト2016年9月16・23日号