儀式を執り行うブルーロッジ。中央に祭壇がある
今日まで、その“謎めいた組織”は様々に語られてきた。曰く、「世界を牛耳る陰謀組織」「日本や世界の歴史を動かした」「秘密の儀式を行っている」等々……。怪しげな言説に彩られた「フリーメイソン」の実態に迫るべく、日本にある15のロッジ(拠点)を束ねる総本部「日本グランドロッジ」(東京都港区芝公園)に足を踏み入れた。そして日本グランドロッジを主宰する第60代グランドマスターの猪俣典弘氏とグランドセクレタリー(事務局長)のフィリップ・A・アンブローズ氏に疑問をぶつけた。
フリーメイソンで常に囁かれるのが「謎のベールに包まれた秘密の儀式」だ。
──「秘密の儀式」があるとか。
猪俣氏:メンバーになると「参入の儀式」、階級が上がると「昇級の儀式」が行われます。儀式は石工にまつわるシンボルなどを使って寓意的・象徴的に行いますが、詳細は非公開です。
〈日本グランドロッジの資料によると、「直角定規やコンパスなどの道具を以て正直さ、思慮、節度」を表すとされており、これらの道具を使うか、それに見立てた何らかの行動を儀式としているとみられる。〉
猪俣氏:昇級には「教義の暗誦」が課されます。教義は石工技術などに関するもので文字化されておらず、近代になり暗号のような形で伝承された。これを自分のメンター(師匠)から引き継ぎ、後輩に伝えることがメイソンの伝統。私は平日にロッジに呼び出され、師匠から「これを覚えなさい」と英語でバッと言われて驚きました。
アンブローズ氏:徒弟から職人に昇級するにはA4用紙換算で30頁ほどの教義を学び、うち4頁ほど暗誦する必要があります。
※SAPIO2016年10月号