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『とと姉ちゃん』に見る新旧「商品評価ジャーナリズム」考

『とと姉ちゃん』で当時の商品テストを緻密に再現

 コラムニストでデイトレーダーの木村和久氏が、近頃気になるニュースをピックアップし独自の視点で読み解きます。今回は依然、高視聴率を保持する『とと姉ちゃん』の劇中で注目を集めている“商品評価”について考察。

 * * *
 NHK朝ドラの『とと姉ちゃん』が、終盤近くになり、俄然面白くなってきました。当初は見てなかったのですが、アカバネ電器の社長役の古田新太が登場してから、対立構造がはっきりし、今は毎日ドキドキしながら見ております。古田は『あまちゃん』でも、秋元康風プロデューサー役で、美味しいところを持っていきました。NHKの誇る、名脇役って感じですかね。

 大筋は「あなたの暮し出版」が商品テストを厳正に行い、その評価が素晴らしく、40万部を越えるモンスター雑誌に成長していきます。それに対して、アカバネ電器の製品は、価格はお値ごろですが、使い勝手が悪いし壊れやすく、粗悪品と言わざるをえません。それを正直に記事に書かれて、アカバネ電器の売り上げが落ちてしまった。そこで赤羽社長は、様々な妨害工作をするという展開です。

 皆さんご存知の通り『とと姉ちゃん』のモデルとなったのは『暮しの手帖』という雑誌で、実際はドラマ以上の厳しい賞品試験を行いました。なにしろトースターのパン焼き試験では、焼いたパンが約4万枚、ベビーカーの耐久試験では、100キロもベビーカーを走行させたのです。昭和30年代の雑誌編集部が、こんなに熱かったとは、ほんと驚きです。

 そんな状況で『とと姉ちゃん』がどんどん面白くなってきた矢先、リアル世界では、某グルメ評価サイトの炎上騒動が起きました。ある店主が、グルメ評価サイトの方針にそぐわない契約をしたら評価を下げられ、それをSNSにアップしたら炎上となったのです。細かい内容は分かりませんが、私自身、ちょうどトレードをやっていたもので、運営元の親会社の株価が、1日で上下にブレまくり、まるでジェットコースターのようでした。

 せっかくなので、『暮しの手帖』と現代のグルメ評価サイトの方針の違いを、時代背景を考慮しつつ、考えてみたいと思います。

【1】広告を入れるか入れないか

『暮らしの手帖』は、創刊当時から広告を入れない方針でした。商品テストの人気はすさまじく、最盛期には部数100万部を超えたそうです。そりゃ100万部あれば、資金は潤沢で、それで商品を買い商品テストを繰り返せます。まさにジャーナリズムの理想形ですね。

 現代のグルメ評価サイトにおいては、広告を入れないのは至難の業です。稀有な例でいえば、『ミシュランガイド』とかね。あれはミシュランタイヤという大企業が、メセナとして始めた企画ですから、元々のお金はありました。食に関する造詣も深いフランスだからできたのです。

 そもそもグルメ評価サイトでは、広告はもちろん、評価される側から参加料や出店料を取るケースがあるので、その段階で公正な評価は難しくなります。しかも、評価するのが運営側か、ネット意見か、はたまたお金を払った人が高いポジションを得るのか…、仕組みがよく分かりません。別に、広告なしのジャーナリズムと謳っているわけではないので、騙してはないのですが。

【2】一方通行か双方向か

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