義肢装具士の臼井二美男さん。履く人の気持ちに寄り添い、一つ一つ手作りされる義足は切断した足にぴったりフィットすると評判 撮影/高樹ミナ
◆衝撃の写真集がファッションショーへ発展
臼井さんに共感した越智さんは2013年、OLやアーティスト、アスリートら義足の女性たちにフォーカスした撮影プロジェクトを開始。手始めに写真展を開くと国内外で話題となり、翌年5月には『切断ヴィーナス』というセンセーショナルな写真集の発行にもこぎつけた。モデルの中にはリオデジャネイロパラリンピックの閉会式に出演した日本初のアンピュティー(四肢切断者)モデルのGIMICOさんもいる。「臼井さんの義足じゃなかったら、モデルをやろうとは思わなかった」とGIMICOさん。それほど臼井さんの作る義足は障害者に生きる希望を与えている。
『切断ヴィーナス』発行の翌年、繊維業が盛んな石川県中能登町から声がかかり、夏祭りの華やかな舞台に11人の義足の女性たちが立った。この切断ヴィーナスファッションショーはバリコレの原型になったとも言えるだろう。
その数ヶ月後、この義足の女性達は、切断ヴィーナスとして、大阪で初めて行われた「バリコレ」のステージに立ち、多くの観客を魅了した。
彼女達は今年も「バリコレ」の舞台で、他の出演チームと一緒に、観客にまったく新しい「障害者」のイメージを伝え続けている。
「こんなファッションショー、世界中を見わたしてもないよね。どのモデルさんもかっこよかったし、観客の皆さんも大歓迎してくれた」
障害があっても臆せず社会に出ていけるようにという機運は近年、高まりを見せている。バリアフリーファッションショーのような事例は、障害者と健常者が同じ目的を共有し団結することで、自然と障害の壁を取り払える良い例だ。「心のバリアフリー」とも呼ばれる多様性を認め合う社会の実現は、こうした環境をいかに作り出せるかにかかっていると言えるだろう。