しかし、スバルにとって本当の勝負はこれからだ。現在、国内ではどのモデルを買っても3か月待ちというほどの売れ行きであるうえ、昔はスバリストがメインだった客層もアイサイトをきっかけに多様化した。
「女性のお客様が夫に『スバルにしたらどう』と言うこともあるそうです。こんなことを自分で言うのもなんですが、昔のスバルでは考えられなかったことです」(日月丈志・専務執行役員)
インプレッサについては自分の哲学と信念に基づいて作ることができたが、役者が下手に人気者になると、それが自縄自縛となって客に媚びてしまって失敗することがあるように、スバルも今後は「今の成功を手放したくない」「皆にそっぽを向かれたくない」という自分の欲との闘いが始まる。これはスバルが今まで経験したことがない、未知の世界だ。今後のクルマづくりがどうなるか興味深い。
●文/井元康一郎(自動車ジャーナリスト)
●撮影/横溝敦