国内では失明原因トップの恐ろしい病とされる緑内障。眼圧の上昇などによって目の視神経の障害が進み、視野が徐々に狭まっていく病気である。40代以上の20人に1人、70代の10人に1人が緑内障と診断されている。
主な要因は加齢や喫煙、遺伝や糖尿病だが、現代人の多くが抱えるストレスも緑内障の引き金となる。
彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類さんはこう解説する。
「心臓や精神面ならともかく、目の病気とストレスが関係するのは意外に思われるかもしれませんが、目の血管は髪の毛より細く、わずかなストレスで血管が収縮して血流が低下します。それが緑内障の要因となるんです」
最大の特徴は、自覚症状がないことだ。緑内障にかかると少しずつ見える範囲が狭くなるが、視力は落ちないため、免許センターや健康診断では見落とされることがほとんど。発症に気づかず、狭くなった視野が原因で交通事故を起こしてしまう人もいる。
ゆっくりと症状が進行するため、「あれ、何かおかしいな」と気づいた時には、すでに取り返しのつかないところまで症状が進んでいるケースが多いという。実際、日本緑内障学会の調査では、緑内障を持つ人の9割は検査を受けるまで、自分が緑内障であることを知らなかった。筑波大学医学医療系眼科教授の大鹿哲郎さんは、こう語る。
「緑内障で痛んだ視神経は決して回復せず、放置すると、時間の経過とともに悪くなるだけです。発覚したその日から点眼薬を用いて、進行を止める治療が一般的です」
とはいえ、進行のスピードが早い場合や、進行度合いが進んでいる場合は手術も求められる。
『週刊現代』の記事では、「緑内障の手術はするな」という強烈な見出しで、「手術で視力は回復せず、術後感染症を起こしやすい」、「なるべく受けないほうがいい」と主張されていた。 緑内障の手術は受けるべきではないのか。平松さんは、手術のリスクを認める。
「基本は目に小さな穴を開けて、角膜と水晶体の間を満たしている房水(ぼうすい)の通り道をつくる手術なので、難易度は高く、傷口からばい菌が入って術後感染症を引き起こすリスクも白内障よりはるかに高くなります。手術によって視力低下をきたすこともあります」(平松さん)