「万能感や特権意識が強い人は、自己愛が強すぎるため、他人の痛みへの共感や想像力が欠如しがちですが、それを許してしまう周囲の構造的問題もあります。
精神医学の用語でイネイブラーといい、例えばアルコール依存症の人がなぜアルコールを飲み続けられるかというと、その人に対してお酒代を渡す人がいるんです。知らず知らずのうちに依存症を助長しているわけです。東大や慶大の加害者を擁護するわけではなく、罪を償うべきだと思いますが、彼らを助長させた人間が周囲にいたはずです」
なぜ複数の男性がいる飲み会に女性1人残ったのか、そもそもなぜそういったサークルに入ったのか、あまりにも無防備すぎる――被害女性に対する心ない声もある。それらの声を強く非難するのが、『東京・強姦救援センター』の織田道子さんだ。
「被害に遭っているにもかかわらず、被害者にも落ち度があったかのように言われます。そして訴えられた場合、加害者側の弁護士は、必死に被害者のことを調べます。普段から被害者がみんなの前で卑猥なことを言っていたのではないかとか、性癖まで、まるで被害者も悪いんですよ、と言わんばかりに…」
昨年1年間の強姦の相談件数は153件(水曜・土曜、3時間の電話相談)。被害者と加害者の関係は、顔見知りがほとんどだという。
「そうしたこともあって被害者の心の傷は相当深い。相談者は10代から80代までと幅広く、ずっと悩み続けて誰にも打ち明けられないまま、30年経ってようやく電話ができたという女性もいました。なかには被害から20年経って自殺した女性もいましたし、精神科に通う人もいます。
男性は強姦したときに、よく“合意の上だった”と言いますが、その時はあまりの恐怖とショックで抵抗できない状態なんです。被害者は一生の傷を抱えたままですが加害者の方は裁判などで刑罰を受けたとしても、その後社会復帰して、社会的地位を築くこともできます。弁護士や公認会計士など、試験を受けることを禁止されているわけではないので、特に今回のように優秀な学生は、そういった道もあるわけです」(織田さん)
※女性セブン2016年11月10日号