食生活の歪みは、10~20年後に生活習慣病という形で表に現われてくる。
「長野県と沖縄県を比較すると、実はカロリー摂取量は長野県のほうが多い。しかし、長野は糖質、脂質、たんぱく質のバランスがよく、厚労省が出している栄養摂取基準に近いバランスになっています。一方の沖縄は、たんぱく質は平均並みですが、糖質が少なく、脂質が多い。たんぱく質にしても沖縄の人はほとんどを肉から摂り、逆に魚の摂取が少ない。
沖縄、長野で40~74歳の約2000人を対象に、頸動脈のプラーク(血管の病変)を調べたところ、沖縄のほうが多く見つかりました」(前出・島袋氏)
これは沖縄に限った問題ではない。現在の日本の20代、30代はアメリカ型の高脂肪食になっているという。沖縄は先を走っているだけなのだ。
ただし、そのことをもって「和食は健康」と結論付けるのも早計だという。地方独立行政法人・東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二副所長はいう。
「和食が日本人を長寿にしたといわれますが、古くからの和食のままだったら、日本は長寿国にならなかったという見方が現在ではされています。明治以降に、和食に海外からの食材も加わるようになり、多種多様の食材を食べるようになったので、日本人は長寿になったとみるべきです。一言でいえば、雑食がいいということです」
多種多様な食材を幅広く、少しずつ摂ることは、リスクの分散にもつながる。将来において新たな研究成果が発表され、「体にいいといわれていたあの食材が、実は毒だった」と判明したときも、慌てたり後悔したりしなくて済むはずだ。
※週刊ポスト2016年11月11日号