◆「IT革命」から「AI革命」へ
1990年代後半と現在を結ぶカギはどこにあるのか。竜沢氏は「世界情勢」「米国の低金利」「テクノロジー」「キチン循環」という4つの視点から説明する。
【1】1997年は「LTCMショック」、現在は「ABCDショック」
最初に指摘したのが、経済に大きな影響を与える「世界情勢」の類似だ。1997年にタイを震源とするアジア通貨危機が発生し、アジア諸国が深刻な金融危機に陥った。ロシアの通貨・ルーブル暴落も続き、「ロシア危機」も発生した。
その影響を受けた米国の大手ヘッジファンドのLTCMが経営破綻し、「LTCMショック」が世界の金融市場に不安を与えたが、その“現代版”ともいえるのがいま世界経済の不安要素とされている「ABCDショック」だ。
これは、Aがアメリカの大統領選挙、Bが英国のEU離脱、Cが中国経済失速、Dがドイツ銀行を中心とする欧州系金融機関の経営危機を指す。竜沢氏はこう指摘する。
「投資家に、『自分にも悪影響が来るぞ、来るぞ』という不安な心理が働いていた。実際の景気は良いのに、日米の金利を押し下げる要因になっている点で現在と似ています」
この「低金利」が次なる相似点だ。
【2】1997年も今年も、米国の利上げが遅れて「低金利」
世界情勢の影響は、米国の金融政策に及ぶ。当時といまでは「利上げ」を取り巻く状況も似ている。
「1997年は約2年ぶりに利上げを実施するなど、米国景気自体は良かったが、アジア通貨危機の影響でその後の利上げが遅れて、低金利状態が続いていました。いまの米国でも、昨年12月の利上げ以来、“するぞ、するぞ”と言われ続けた利上げは今年一度も行なわれておらず、歴史的な低金利が続いています」(同前)
景気が手堅く低金利だと、市場の期待が高まって株が買われやすい。実際、20年前も好景気と低金利の共存で米国株は一時の停滞の後、上昇が続いた。
「基本的に経済の構造上、日本経済はアメリカに引っ張られます。いま、米国経済の状況が良い。それに倣って、今後は日本株が上昇すると考えています」(同前)