高木さんの週末の過ごし方は一貫している。日曜夕方の放送前までに、サザエさんが何を出すか、過去の膨大なデータから最も確率の高い「手」を予想。パターンをプログラミングした自作のソフトを使って抽出しているという。日曜はテレビの前で、サザエさんと勝負。外出していた場合はスマートフォンによるワンセグで視聴。万が一リアルタイムで見られなかったときは、録画してあるものを帰宅後に見て勝負する。
高木さんにとって今や「趣味」となっているジャンケン。そもそも、興味を持つようになったのはなぜなのか。アニメの放送スタートとほぼ同じ頃に生まれ、『サザエさん』を見るのが生活の一部だったという高木さん。今から26年前、『サザエさん』についての話を誰かと共有しようと、当時「パソコン通信」と呼ばれたネットの掲示板で、同じような「サザエさん好き」とやり取りしていた。
だが、冒頭に紹介した事件が起きてからというもの、「パソコン通信」の仲間たちとジャンケンの勝敗を競うように。だが最初は白熱していた「ジャンケンバトル」もやがて収束に向かい、一人またひとりとジャンケンをしなくなっていった。しかし高木さんだけは続けた。「もともと自分が星取表をつける係をしていたんです。手元にそうしたデータが残っていたこともあり、そのまま1人でやり続けてみようと」
◆「父親がサンタだとバレる」と批判されたことも
以来25年。「『サザエさん』にもさまざまな出来事があった」と振り返る。原作者・長谷川町子さんの死去(1992年)、原作コミックを出版していた姉妹社の廃業(1993年)。また、1989年の1月8日に放送される予定だったアニメ1000回記念スペシャルの放送が、前日に昭和天皇が崩御し報道特別番組と重なったため中止となったこともあった。
「また2000年12月24日に放送された、マスオがタラちゃんのクリスマスプレゼントをどうやって渡そうか悩むというストーリーに対し、『子供がこれを見ていたら父親がサンタだとバレる』といった批判が殺到。それ以降サンタにまつわるエピソードはあっても、『父親がサンタを演じる』といった傾向の話はなくなりました」
25年間で声優も何人か交代した。1998年にはカツオの声がバトンタッチ(それまで18年間カツオの声を務めてきた高橋和枝から現在の冨永みーなへ)、ワカメ役も2005年からは変わり(野村道子から津村まことに)、また最近では2014年に波平、2015年に舟役が相次いで入れ替わった(波平は永井一郎から茶風林に、舟は麻生美代子から寺内よりえに)。
◆「演じる人が変わってもジャンケン続けてほしい」