◆取れるところから取れ
ビール市場が1994年のピーク時から約25%縮小するなか、「安くてビールに劣らぬ美味さ」でシェアを拡大し、“家飲み”の主役に躍り出たのが発泡酒や第三のビールだ。前出の税制改正大綱を取りまとめる自民党税制調査会幹事の竹本直一・衆院議員に話を聞いた。
「同じような味のお酒なのに税金や価格が大きく違うのは税制的に不適切との声が以前からあり、この不公正を是正するという目的がまず1点。加えて、日本のビールは割高だとの世論も根強く、価格の押し上げ要因となっているビールにかかる税額を改める必要があると考えたためです」
日本のビール税が諸外国と比べて非常に高いのは事実だ。アメリカの9倍、ビール大国ドイツの19倍に達し、日本では酒類の中で最も高い税率が課せられている。ただし、それは「“取る側の論理”ではないか」と指摘するのは前出の浦野氏である。
「“不公正の是正”や“一律課税”など、一見公平な印象を与える今回の税制改正ですが、それらはカモフラージュに過ぎません。税の基本は負担能力に応じた課税です。本来は、高級な酒の税率を高くして、第三のビールのような庶民向けの飲料は低くするというのが税法上の正解です」
経済ジャーナリストの荻原博子氏もこう話す。
「発泡酒や第三のビールの普及は企業努力の賜物です。それを増税のターゲットにするのは、産業政策としてもおかしい。家計にとって大きなマイナスとなるし、今回の改正は庶民イジメの“税制改悪”に他なりません」
※週刊ポスト2016年12月9日号