現在はほとんどの社殿が国宝や重要文化財に指定されているため、造り替えではなく大修理を行なう。今回は2007年から一之鳥居を皮切りに16の建造物を修理。昨年春からは、最も重要な社殿、神様の住まいである本殿の造替が進められた。
他の建造物と異なり、本殿の造替には神職による数多くの祭儀が伴う。御神体を本殿から仮の御殿である移殿へと遷す「外遷宮(仮殿遷座祭)」が執り行なわれたのは昨年3月27日。
この日のために、神職は2月末に精進入りし、釜の湯でお祓いを受ける「御湯」、移殿の装いとお祓いをする「移殿御装束並清祓之儀(うつしどのごしょうぞくならびにきよはらいのぎ)」、外遷宮で身に着ける装束を聖流・水谷川の水で清める「具足洗」など、古式の手順を踏んで準備を整えた。
今年9月に本殿の修理が終わると、「本殿立柱上棟祭」を皮切りに外遷宮同様に様々な祭儀を経て、11月6日に御神体を本殿に還す「正遷宮(本殿遷座祭)」が、つつがなく完了。奉祝の芸能奉納や行事が続々と行なわれた。
「脈々と受け継がれてきた式年造替の伝統の一駒として、私たちはただ粛々と、つつがなくご奉仕したまでです」と花山院宮司は語るが、60回目という節目でもあり、本殿の獅子狛犬4対8体を800年ぶりに新調。藤原頼通が奉納したと伝わる瑠璃燈籠も700~800年ぶりに新調して本殿に釣り下げられた。
「日常ではなかなか神仏のことを考える余裕はないかもしれませんが、式年造替を通じ、日本を古くから守ってこられた神様を身近に感じられるきっかけになれば幸いです」(花山院宮司)
神職などの案内による「本殿特別参拝と釣燈籠特別拝観」(2016年12月1~10日、2017年1月10日~3月31日、予約申込制)など、式年造替を記念する特別企画はまだ続く。
神聖な場が清浄に保たれることで、訪れる人にも美しい心が宿る。清らかな聖地で心を洗い、神様とのご縁を結びたい。
※週刊ポスト2016年12月9日号