こうして岡野氏は名実ともにガイナーレ鳥取の「顔」となり、J2復帰、そしていずれはJ1の華々しい舞台を夢見て、獅子奮迅の活躍を続けている。
だが、そんな岡野氏の意気込みに反してチームは低迷。今期は元日本代表キャプテンで「闘将」と呼ばれた柱谷哲二氏(52)を監督に迎えたが、J3の16チーム中、15位の成績でシーズンを終えた。
そして、このインタビューを行なった12月15日、ガイナーレ鳥取は元日本代表でJ2京都サンガのアンダー世代監督を務めた森岡隆三氏(41)を来季監督に招聘する新体制を発表した。
さっそく岡野氏に、新監督に期待する手腕や、来期のチーム展望を話してもらおうと水を向けたのだが、「じつは僕は来期からチームの現場には一切タッチしないことに決めたんです」ときっぱり。
「これまでの営業は、『絶対にJ2に昇格させるので、支援をお願いします』というやり方でずっと気張ってきましたが、現実はそんなに甘くない。だから、チームの育成強化は浦和時代から知っている強化部長の吉野(智行氏)に任せて、僕は営業に専念することに決めました。
僕がやるべきことは、ガイナーレ鳥取という“おらが町”の地方クラブを大事に守りながら、もっとたくさんの全国の人たちにも存在や活動内容を知ってもらうこと。そのためには僕自身もガイナーレにお金を投資して、もっと経営に関わろうと思いました」
一時は柱谷前監督とともに責任を取ってチームを去ることも頭をよぎったというが、「本当の責任は、目標を成し遂げるまでこの場所に居続けることではないか」と覚悟を決めた。
しかし、岡野氏ほど輝かしいプレーヤーの経験や実績を持ちながら、あっさりと現場を離れることなどできるのか。
「そりゃ、チームが負け続ければもどかしい気持ちになりますし、怠慢なプレーをする選手がいれば、自分がグラウンドに出て行きたくなる時もありますが、今はそれどころじゃありません。
裏方仕事は大変ですが、やり甲斐のある仕事ですし、選手と同じでサッカーにかける情熱がなければスポンサーにも伝わらない。苦しい時こそ笑って、ガイナーレをもっと大きくするために、自分にしかできない仕事をやるだけです」
フロントに回っても常に本気で前線を走り続ける岡野氏──。長らく日本のサッカー界を活気づけてきた「野人」の面目躍如といったところだ。