平匡演じる星野は、主人公のみくりのちょっとした発言や行動にもいちいち反応し、決してスルーせずに、驚いたり戸惑った表情を見せた。そしてその後、柔らかく温かく微笑んでみせた。

 他番組での星野も、相手の話に、喜怒哀楽がはっきりした表情と、感情を隠すことなくわかりやすい仕草で、素直にストレートに反応する。その屈託のなさや明るさは、相手に嫌な感情を与えることはない。加えて、星野は最後に微笑む。微笑みで終えることで、見ている人の心に残るのは優しさや楽しさになる。

 心理学者のポール・エクマンが「さまざまな楽しい感情には笑いが含まれている」といっているが、シーンの最後に微笑むことで、平匡の誠実さや温かさがアップしただけでなく、星野への印象も各段にアップしたはずだ。

『逃げ恥』での星野は、みくりと話している時、きちんと相手の方を向いて話を聞く。嫌な顔も面倒な顔も見せず、眉間にシワを寄せることも、眉をひそめることも、口元を歪めることもなかった。いら立ち、面倒くささ、不満…、そんなマイナス感情を表す仕草がほとんどなかった。

 身体が揺れたり、動いたりする微妙な仕草もなく、いつもまっすぐ立っていた。このため迷いなく、相手にまっすぐ一途に向いていると感じさせた。照れたり困ったりした時は、無表情になる演技をすることで、かえって内面の動揺など心の動きがわかってより効果的だった。

 そのせいか、見ているこちらは嫌な感情を刺激されたり揺さぶられることもなく、ガッキーのかわいさも加わって、「ムズキュン」にハマり、イライラしたり、キモいと思うことがなかったのだろう。

 さて、このマイナス要素がない、不快感を与えない、というのは、モテるための強い武器なのだ。心理学者のスノーランスキーとカールストンが「人はネガティブな情報をより重視する傾向がある」といっているように、いったん不快感を与えれば、好かれるためにはそれ以上の努力が必要になる。だから、マイナス要素がないのは、モテるための絶対条件になる。

 劇中の仕草で興味深かったのは、平匡がずれたメガネをクイッと直す動作。女子が「メガネ男子の仕草でカッコいいと思うのは?」と聞かれると、必ずランクインする仕草だけれど、『逃げ恥』では、Hな想像や欲求が頭をかすめた時に“冷静になれ、理性を取り戻せ”と、真面目な顔に戻ろうとする仕草だったのではと思う。演じた仕草には、それなりの意味や心の動きを考えていたはずだ。

 カッコよすぎない絶妙なほどほど感に、ついお節介を焼きたくなるキャラ──星野源がモテる理由は、そんなところかもしれない。

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