「国民戦線」創設者のジャン=マリー・ルペン氏
2年前『SAPIO』でフランスの極右政党「国民戦線」創設者のジャン=マリー・ルペン氏は「今日の仏社会は、基本的安全さえも犯されている」と嘆いた。2015年、同国ではテロが相次いだ。娘のマリーヌ氏が2017年仏大統領選の有力候補として注目されるなか、ジャーナリストの宮下洋一氏が、娘のマリーヌに期待すること、これからフランスが歩むべき道について聞いた。
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今年5月の大統領選挙では、娘のマリーヌ・ルペン(極右国民戦線=FN*1)が大統領候補に挙がっている。
【*1 1972年、結党。当初は反共政策を掲げていたが、共産主義陣営の勢力が弱まるにつれて、死刑制度の復活や移民労働者の排斥という主張を展開していくようになる。現党首はマリーヌ氏】
我が国はまだまだ左派陣営の力が強い。選挙にはバイアスがかかり、民意が直接投票に繋がるかは分からない。昨今のテロなどの国内事件によって、FNが台頭するかというとそんなに甘くない。
組織内部に活力が欠けているのは明らかだ。私のような者は、すでに組織から追い出される始末である(*2)。もちろん、大統領選では奇跡は起こり得る。が、私はマリーヌの考えに不安を抱いている。
【*2 2015年、FN現党首マリーヌ氏が人種差別発言を繰り返し、反ユダヤ主義を標榜する父を追放。以降、FNはソフト路線に舵を切ったとされる】
彼女は、政権をとるため、自らの政策を曲げ、左派陣営に媚びを売った。敵と戦うのではなく、敵に適応する道を選んでいる。彼女は(敵対者にとっての)“悪魔”であり続けるべきだった。
彼女が大統領選を勝ち抜くには、40年間、揺らぐことのなかったFNの神髄に立ち戻ることだ。敵に迎合することなく、敵を叩くことを忘れてはならない。
参考にすべき男がいる。そう、ドナルド・トランプだ。私は彼の勝利を望んでいたし、それが叶ったことに喜びを感じている。彼の戦略はお見事だった。