敵対するメディアを前に、彼は常に誠実であろうとし、正しき言動を通した。彼は経営のプロで、思想学者でもなく純粋な政治家でもない。現実世界にどっぷりと浸かり、生きてきた。その態度こそ、私を満足させる。

 いま必要なのは現実を直視することだ。“自国ファースト主義”は、決して非難されるべきものではない。ドイツのメルケルは、歴史的反省から、多くの人々に扉を開いた。(彼女の行動は称賛されているが)ドイツ社会の競争に勝ち残れなかった移民は、シェンゲン協定(*3)によって、フランスに渡ってきているという現実を多くの人は知らない。

【*3 EU加盟国の間で、国境検査なしで国境を越えることを許可する協定】

 欧州連合(EU)は、まったくのユートピアであるし、シェンゲン協定は早く廃止すべきだ。文明、テクノロジー、経済利益を分かち合える連合など成立するわけがない。既に私が議員だった当時、1957年のローマ条約(*4)に反対票を投じている。

【*4 欧州経済共同体と欧州原子力共同体の設立を決めた条約。人・モノ・金・サービスの自由移動を目的とし、欧州連合の基礎になった】

 それから半世紀経ち、いま予想通り、ブレグジット(英国のEU離脱)が実現した。次なる“フラグジット”(ブレグジットにかけたフランスのEU離脱)を期待したいものだ。

 今後、フランスは、さらなる脅威に満ちるはずだ。これに立ち向かうためには、国家生存への迅速な行動が大切になる。娘が現実を直視することを願っている。

●Jean-Marie LE PEN 1928年生まれ。パリ大学卒業。戦後最年少の27歳で仏国民議会の議員当選。その後、休職しアルジェリア戦争に従事。1972年、仏「国民戦線」(FN)を創設。2002年の大統領選では、泡沫候補とみられていたが、犯罪に対する社会不安から票を伸ばし、シラク氏との決選投票まで残る。当時、「ルペン・ショック」と呼ばれた。

※SAPIO2017年2月号

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