地図を見ると、神奈川県に食い込んだ地形の東京都町田市。同じ都民からでさえ「町田市って神奈川県だったっけ?」とイジられることは少なくなかった。とはいえ、まさかホントに神奈川県になるとは──。
2016年12月1日、町田市と隣接する神奈川県相模原市との間の境界が変更され、町田市の一部が相模原市になった。同様に、相模原市の一部も町田市になったのだが、ネット上では「町田市の一部が神奈川県になった」という部分がクローズアップされ、「神奈川県町田市になる日も近い」「東京の盲腸が切り離された」と異様な盛り上がりを見せた。
市境を蛇行する「境川」の氾濫防止のために行なった河川工事で飛び地(行政区画などで地理的に繋がっておらず分離している部分)が生まれており、それを解消する、というのが変更の理由だ。
こうした境界変更は1999年から行なわれており、実は6度目。町田市総務課によれば、「河川改修に伴う境界変更はあと3回予定している」という。
傍から見ればただの区画整理だが、この報を受けた当事者たちは気が気でない。まずは町田市民の意見から。
「住所が町田から相模原に変われば、土地の評価額が下がりそうで嫌だ」(町田市・50代男性)
「相模原市と一緒になるくらいなら、東京・八王子市と組んで政令指定都市になったほうが良いと思う」(町田市・60代男性)
と「都民」であることに誇りを持っているからか、容赦ない言葉が飛ぶ。これに相模原市民が反論する。
「町田市民が最も多く使うバスは、神奈川が誇る『神奈川中央交通バス』。なのに、町田市民はいつも相模原市民を見下してくる。23区の人たちの前では小さくなってるくせに。むしろ神奈川県に感謝してほしい」(相模原市・40代男性)
聞けば聞くほど、いがみあいが浮き彫りになる両市民。こんなことで境界変更はうまくいくのか。一方、こんな現実的な意見も。
「境川沿いを車で走ると、町田市と相模原市を何度も行き来することになる。だから、カーナビが『東京都に入りました』『神奈川県に入りました』って連呼し煩わしかった。境界変更でそれが無くなるなら良いのでは」(相模原市・60代男性)
“領土問題”は関東地方にも確かにあったようだ。
※週刊ポスト2017年1月27日号