しかし、昨年内には締結されるのではないかと見られていたキリンとコカ・コーラの提携話は、年が明けても一向に音沙汰がない。
1月19日に開かれたキリンビバの事業方針説明会でも、記者から真っ先に質問が飛んだが、堀口英樹社長は「今は何も話せない」の一点張り。提携交渉が進んでいるのか否かの進捗状況さえ明かさなかった。
その一方で、キリンビバ自身の業績は安定傾向にある。昨年3月に大幅リニューアルした「生茶」は年初目標の1.5倍を超える2620万ケースの販売を記録。発売から30周年を迎えたロングセラーの「午後の紅茶」も過去最高となる5150万ケースを販売した。
また、長らく苦戦していた缶コーヒーの「ファイア」も、発売前に新商品名を伏せた“シークレットサンプリング”を大々的に行ったことも奏功し、好調な販売を続けている。
「飲料市場でもっともボリュームの大きなお茶とコーヒーで復調しているのは、キリンビバにとっては明るい材料です。また、今年からストレスの軽減を謡った機能性表示食品の飲料『SUPLI(サプリ)』シリーズで、健康に訴求した新商品も続々と投入します。
とはいえ、経営資源の選択と集中、コスト削減等で収益構造を高める努力をしなければ、利益ある成長が続けられないのも事実。自社の強みを活かしながら、いかに他社と互角の立場でアライアンスを結ぶことができるかが、生き残りの大きなカギといえるでしょう」(前出・宮下氏)
ここにきて、一気に合従連衡が進みそうな気配の飲料業界。かつてサントリーとの経営統合が破談に終わった苦い経験も持つキリンだけに、今回はいかにして巨人、コカ・コーラと歩調を合わせていくのか注目だ。