最大の魅力は、脳梗塞で苦しむ患者や家族の負担軽減が期待できることだ。脳梗塞は後遺症が残りやすく、介護が必要になるケースもある。
「この治療の最大の目的は、患者の運動機能の回復です。完治できなくても、例えば車椅子の患者が杖で歩けるようになれば、患者や家族にとって大きな喜びです。再生細胞薬で患者のQOL(生活の質)は格段に上がるはずです」(今井氏)
2016年10月からは、交通事故などで脳が傷つき、手足の麻痺や言語障害がある「外傷性脳損傷」を対象に、国内5か所の医療機関で新薬承認の治験が開始。
今井氏は東大病院での治験を担当している。今井氏が言う。
「まずは脳梗塞と症状が似ている脳外傷患者で治験を先行し、“本丸”である脳梗塞治療への適用を見据えています」
政府の成長戦略のもと、2014年11月に施行された医薬品医療機器等法(旧薬事法)はSB623などの「再生医療等製品」について、製造・販売の承認手続きを簡素化した。治験の結果次第だが、早ければ2019年中にも「夢の新薬」が実用化される見通しだ。
※SAPIO2017年2月号